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ある日突然、一家の稼ぎ頭が亡くなってしまった―…。
そんなとき、遺された家族が金銭的に困らないように救済してくれる制度が遺族年金です。
公務員が亡くなった場合は、誰にどのくらいの額が支給されるのでしょうか?この記事では、公務員の遺族年金制度についてわかりやすく解説していきます。
目次(もくじ)
公務員の遺族年金とは?
被保険者が死亡した際、残された遺族に対して支給される公的年金のことで、現在は以下の2種類があります。
- 遺族基礎年金:国民年金の被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした人が死亡した時に支給されます。
- 遺族厚生年金:サラリーマンや公務員など、厚生年金加入者が死亡した時に支給されます。
②について、以前、公務員は「遺族共済年金」に加入していましたが、現在は「遺族厚生年金制度」に一元化されて運用されています。これについては次の項で説明していきます。
遺族共済年金は遺族厚生年金に変わった
以前より、遺族年金には
- 「遺族基礎年金」
- 「遺族厚生年金」
- 「遺族共済年金」
の3種類があり、給付の種類や受給額は、その人の職業や加入している公的年金(国民年金や厚生年金など)により、加入する年金制度が決定されていました。
ところが平成27年10月1日から、これまで
- 「厚生年金保険」
- 「共済年金」(国家公務員共済組合、地方公務員等共済組合、私立学校教職員共済)
に分かれていた被用者の年金制度が「厚生年金保険」に統合されたのです。
以前より、官民格差と批判があった公務員の共済年金制度を厚生年金保険に一元化することで、制度間の不公平をなくす狙いがあったようです。
この一元化により、公務員の遺族年金の支給要件は、制度改正以前に比べて厳しくなりました。
こうした改悪以外にも、公務員をやっていて遭遇するデメリットはあります。公務員のメリットとデメリット12項目!元公務員が徹底解説するぞ!で詳しくまとめていますので、ぜひ併せてご覧ください。
遺族厚生年金の受給資格は?
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者または被保険者であった方が死亡したときに、遺族に対して支給されます。
それでは、具体的な支給要件と受給資格者について見ていきましょう。
(1)支給されるための要件
支給要件は、次のいずれかを満たしている必要があります。
- 厚生年金者の被保険者が死亡したとき
- 厚生年金者の被保険者が、厚生年金の被保険者期間中に初診のある傷病により、初診から5年以内に死亡したとき
- 1級または2級の障害厚生(共済)年金の受給者が死亡したとき
- 老齢厚生(退職共済)年金の受給権者または老齢厚生年金の受給資格期間を満たした方が死亡したとき
- 保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が25年以上ある者が死亡したとき
また、上記①、②に該当する場合、あわせて、次の「保険納付要件のいずれかを満たしている必要があります。
- 国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が、保険料を納めていなければならない期間(20歳~死亡日の月の前々月までの期間)の3分の2以上あること。
- 死亡日が平成38年3月31日以前の場合は、死亡日の月の前々月までの1年間に保険未納期間がないこと。
戦争時代を生き抜いた人にもらえる「恩給」については公務員の恩給。金額はいくらもらえる?新たにもらえる人はいない!をご覧ください。
(2)遺族の要件および順位
ここで言う「遺族」とは、厚生年金の被保険者または被保険者であった方、もしくは年金を受給していた方が死亡した当時、生計を維持していた家族のことです。
その中で、以下の番号が若い順に遺族としての優先順位が高くなり、遺族年金を受給できます。
- 配偶者・子ども
- 父母
- 孫
- 祖父母
なお、夫、父母及び祖父母については、被保険者の死亡当時に55歳以上であることが必要なほか、子および孫については、次のいずれかに該当する方に限られます。
(ア)18歳到達年度の年度末を経過していない、未婚の者
(イ)被保険者または被保険者であった方が死亡した当時から引き続き障害等級が1級または2級に該当する障がいの状態にある20歳未満の未婚の方
遺族のうち、①の配偶者・子どもは、「遺族基礎年金と「遺族厚生年金の両方とも受給することが可能です。
その場合、末子が18歳になる年度末に、遺族基礎年金の受給資格がなくなってしまう点には注意が必要ですが、妻の場合、その後に「中高齢寡婦加算」が受給できるようになります。
ただし、夫が死亡時に30歳未満の妻の場合は、「遺族厚生年金」は5年間しか受給できず、亡くなったのが妻である場合、55歳以下の夫には受給権自体がありません。
遺族厚生年金は、中高齢の妻や、18歳未満の子がいる妻とその子供を金銭的に救済する意味が大きいため、その他の遺族については支給要件が厳しくなっています。
遺族厚生年金の金額は?
遺族厚生年金は、(①:報酬比例部分)+(②:中高齢寡婦加算)で計算されます。
さらに、平成27年9月までの公務員共済組合の加入期間をもとに、旧遺族共済年金における職域年金相当部分に該当する「経過的職域加算額(遺族共済年金)」が別途支給されます。
①報酬比例部分
以下の(ア)+(イ)が報酬比例部分になります。
(ア)(平成15年3月31日までの期間)
平均標準報酬月額 × 7.125 / 1,000 × 平成15年3月までの被保険者(組合員)期間の月数×3/4
(イ)(平成15年4月1日以後の期間)
平均標準報酬額 × 5.481 / 1,000 × 平成15年4月以後の被保険者(組合員)期間の月数×3/4
②中高齢寡婦加算
18歳未満の子どもがいない妻が40歳以上の場合、65歳になるまでの期間はもらえる金額が増えます。
これは、妻が65歳に達して本人の老齢基礎年金を受給できるようになるまでは遺族厚生年金だけしか支給されないこと、また、中高齢の妻は十分な収入を得る機会が制約されることなどを考慮したものです。
平成30年度の中高齢寡婦加算の額は、一律584,500円になります。
ただし、妻に18歳未満の子供がいて、遺族基礎年金の受給権がある場合は、中高齢寡婦加算は停止されます。
また、遺族厚生年金の権利を取得した当時に40歳未満である妻は、40歳になっても中高齢寡婦加算が加算されません(同時に遺族基礎年金の権利を取得した場合は除きます)。
以上をふまえ、具体的な支給額がどのくらいになるのか、一例を計算してみます。
【例】妻と18歳未満の未婚の子供1人:死亡時の平均月収額30万円の場合
780,100円(基礎年金)+224.500円(第1子加算)+487,366円(遺族厚生年金)
=1,491,966円(年額)
となり、月当たり約12万4,000円の遺族年金(遺族厚生年金+遺族基礎年金)が支給されることになります。
→ 公務員の退職後の過ごし方と年金についてはこちらの記事へどうぞ
遺族厚生年金の支給停止要件は?
遺族厚生年金の受給者が次の場合、支給が停止されます。
- 夫、父母または祖父母の場合:60歳に達するまで支給停止となります。
- 配偶者および子の場合:子に対する支給は停止し、代わりに配偶者に支給します。
65歳以上になるともらえる額が変わる
64歳までは、遺族厚生年金と老齢厚生年金の受給権を持つ場合は、原則として、いずれか一方の年金を選択して受給します。
65歳になると、以下のように遺族厚生年金の支給額が変わります。
(ア)老齢基礎年金+老齢厚生年金
(イ)老齢基礎年金+遺族厚生年金
(ウ)老齢基礎年金+遺族厚生年金2/3+老齢厚生年金1/2 (配偶者のみ)
老齢年金を全額受給し、上記(ア)(イ)(ウ)の中で最も多い額と老齢厚生年金との差額が、遺族厚生年金として支給されることになります。
どんなときに遺族厚生年金の受給権がなくなる?
遺族厚生年金の受給者が次のいずれかに該当したときは、受給権は失効します。
- 死亡したとき
- 婚姻したとき(事実上の婚姻関係も含む)
- 直系血族及び直系姻族以外の養子となったとき(事実上の養子縁組も含む)
- 子または孫である場合は、18歳到達年度の年度末を経過したとき(障害等級が1級または2級に該当する障がいの状態にある場合を除く)
- 18歳以上で障害等級が1級または2級に該当する障がいの状態にある子または孫である場合は、その事情がなくなったとき。または20歳に到達したとき
以上が公務員の遺族年金でした。
保険や年金は難しい言葉が多く混乱しがちですが、いざというとき遺族を守ってくれる心強い制度です。
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